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マンションの法律問題は「マンションの問題」で解決

管理費請求の具体的手続11detail

相続財産管理人の財産管理に対する請求・配当要求(1)

相続財産管理人による財産管理とは

 管理費等を滞納する区分所有者が死亡し、この者に相続人が存在しなかった場合や相続人が全員相続放棄していた場合に、法人となった相続財産としてのマンションを相続財産管理人に処分(換価)してもらい、滞納管理費を回収することが可能となる場合があります。相続財産管理の手続とは、相続財産法人が有する積極・消極財産を清算して消滅させ、残余財産があれば、これを第三者に分与するとともに国庫に帰属させる管理手続です。
 「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人と」なり(民法951条)、こうした場合に「家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産管理人を選任」することになります(民法952条1項)。「相続人のあることが明らかでないとき」とは、相続人の存在・不存在が不明のことを言うが、戸籍等を確認したなら存否は明らかになると思われるのですが、認知していない子供がいることも有りうるのでこうした表現になっています。なお、相続人の生死不明又は行方不明等の場合は含まれません(東京高決昭和50年1月30日)。被相続人に相続人は存在しないが、被相続人が遺言を残していた場合に、包括受遺者が存在することになりますが、こうした場合は、「相続人のあることが明らかでないとき」には該当しないとされています。
 また、相続財産管理人選任の申立を行うことができる利害関係人とは、被相続人に対する債権者・相続財産の受遺者・相続財産の分与を請求する特別縁故者等が該当します。滞納管理費の請求権者である管理組合は、被相続人の債権者として相続財産管理人選任の申立を行えます。
 なお、検察官が相続財産管理人選任の申立てをすることはないので、検察官にこうした申立てをお願いいしてもやってくれません。仮に、相続財産であるマンションに住宅ローンに係る抵当権等の担保権が設定されていた場合には、当該ローン債権者に相続財産管理人選任の申立てをしてもらい、競売等の手続が行われたときに配当を請求することが合理的です。担保権が設定されていない場合、管理組合は利害関係人として相続財産管理人選任の申立を行えば良いです。通常、申立ての後、予納金を裁判所に納めなければなりませんが、相続財産管理人の候補者がある場合にはその必要がないこともあります。

相続財産管理人選任申立の要件

@相続が開始したこと相続は、被相続人の死亡によって開始する(民法882条)。この死亡とは、一般的な自然死のほか、失踪宣告による擬制死亡(民法30・31条)も含まれます。
A相続人の不存在「相続人のあることが明らかでない」とは、相続開始のときを基準として定められますが、実務上では具体的に以下の場合とされています。
ア 戸籍上最終順位の相続人はいるが、相続資格がない場合。例として、最終順位の相続人がすべて相続欠格(民法891条)、相続人の廃除(民法892条)になった場合と相続人がすべて相続の放棄(民法938・939条)をした場合。
イ 戸籍上相続人は存在しないが、割合的包括遺贈者がいる場合は、受遺分を除く残部について、相続人が不存在ということになります。ただし、全部包括受遺者がいる場合は除かれます。
ウ 戸籍上相続人は存在しないが、相続人が出現する可能性がある場合。例として、父を定める訴え(民法733条)、認知の訴え(民法787条)、親子関係存在確認の訴え、離婚の無効の訴え(民法第742条の類推適用)等。
エ 戸籍上の唯一の相続人が表見相続人である場合。
B相続財産の存在相続財産の存在については、家庭裁判所では実体法と手続法の両面から検討されます。実体法からは、相続財産は、相続開始時に被相続人に属していた財産的な権利義務その他すべての法律関係。手続法からは、法的紛争として取り扱うに足る財産的価値があることが必要となる。つまり、印紙代、郵便切手代、官報公告費用などのほか、管理人の報酬費用や管理行為をするのに不可欠な諸費用をかけて処理するだけの価値がなければ、財産管理事件として処理すべきではないと解される。
C利害関係人
ア 特別縁故者
イ 相続債権者(抵当権者を含む)
ウ 事務管理者
エ 相続財産を買収したい国・地方公共団体
オ 徴収する立場の国や地方公共団体
カ 福祉事務所・特別養護老人施設
キ 時効により土地所有権を取得した者
ク 被相続人から物件を取得したが対抗要件を取得していない者

申立先(管轄)家庭裁判所

 申立てを行う家庭裁判所は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所となります(家事事件手続法203条1号)。

申立に要する書面等

@相続財産管理人選任申立書
A戸籍等の謄本及び住民票 ・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本)
・被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍除籍,改製原戸籍)謄本
・代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票 B財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書))
C利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(管理組合より区分所有者に対して管理費等の支払を求めた請求書や管理費の滞納計算書。管理会社より請求書を送付していた場合には、管理組合と管理会社の間における業務の委託関係を示す委託契約書等を添付する。)
D資格証明書(管理組合が法人の場合は法人登記簿謄本。法人でない場合は理事長の資格を管理組合の役員が証明した書面、理事長を選任した総会議事録及び根拠となる規定を定めた管理規約を添付する。
E相続関係説明図
F相続財産管理人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍の附票
→相続財産管理人選任申立書の書式はこちら
→相続財産管理人選任申立書の記載例はこちら

費用

@戸籍等取得費用
A収入印紙800円分(民訴費用等に関する法律13条1項・別表第1の15)
B予納郵便切手(各家庭裁判所の定めによる)
C官報公告料(相続財産管理人選任の公告(家庭裁判所が行います。)。円)
D予納金(家事事件手続法30条、民訴費用等に関する法律12条、家庭裁判所により異なる。(大体20〜100万円)相続財産管理人の業務上の経費等については、基本的に相続財産から支弁されますが、相続財産が僅少である場合や、債権者等に対する債務の弁済を行った結果相続財産が消滅した場合には、予納金の中から相続財産管理人の経費や報酬が支払われます。 しかし、相続財産管理人の候補者を指定して申立てを行い、この者が相続財産管理人に選任された場合には、報酬等は家庭裁判所を通さず申立人と候補者との間で決定されるので予納金の納付はなされないことが一般的。

審判手続

 相続財産管理人選任の申立てがなされた場合、家庭裁判所は、当該申立てを相当と認めるときは、相続財産管理人選任の審判をする。審判は、申立人のほか審判を受ける者である管理人にも告知されるが(家事事件手続法第74第1項)、効力自体は管理人に告知したときに発生する(家事事件手続法第74条2項本文)。家庭裁判所は、管理人を選任したときには、遅滞なくその旨を公告しなければならない(民法第952条2項)。この公告は、家庭裁判所の掲示板に公告されるとともに、官報に掲載される(家事事件手続法4条1項)。内容は、下記「相続財産管理人選任後の手続き@相続財産管理人選任の公告」記載のとおり(家事事件手続法109条1項参照)

 ●相続財産管理人選任手続き
  @申立て
    ↓
  A審理(書面照会・参与員の聴き取り・審問)
    ↓
  B審判(裁判官の判断)
    ↓
  C選任の可否に関する結果の連絡(審判書謄本)

 @〜C迄凡そ1ヶ月かかる。仮に申立を却下する審判が出されたとしても、これに対する不服申立てはできない。 管理人を選任する方式は、申立人推薦方式と裁判所選任方式がある。申立人推薦方式においては、適正・迅速に管理業務が遂行されないおそれがあること、推薦管理人が申立人の利益のみを尊重して裁判所の指導監督に服さないことも多々あるため、進行管理の面から裁判所選任方式のみを採用する家庭裁判所が増えている。

相続財産が共有持分になっているとき
 この場合、民法255条との関係が問題となります。つまり、この規定は「共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」と定めているため、相続人が不存在の場合、「共有の弾力性」(ゴムまり論)により、被相続人の持分が他の共有者に帰属することになりそうだからです。
 しかし、最高裁は、最判平成元年11月24日(民集43−10−1220)で、共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了したときは、その持分は、民法958条の3に基づく特別縁故者に対する財産分与の対象となり、右財産分与がされないときに、同法255条により他の共有者に帰属するとの判断を行っています。したがいまして、相続財産が共有となっている場合であったとしても、被相続人に対する債権者は、共有者の存在に関係なく相続財産から支払や配当を受けることができるのです。 

相続財産管理人選任後の手続はこちら

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