相続財産管理人の財産管理に対する請求・配当要求(2)
相続財産管理人選任後の手続
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@相続財産管理人選任の公告(民法第951条第2項)
相続財産管理人選任の審判がなされた後、家庭裁判所は、相続財産管理人が選任されたことを知らせるための公告をしなければなりません(公告期間2か月)。広告内容は以下のとおりです。
平成○○年(家)第○○号 ○○県○○市○○□丁目□番地□
申立人 ○○○○ 本籍 ○○県○○市○○□丁目□番地□ (被相続人の本籍)
最後の住所 ○○県○○市○○□丁目□番地□ (被相続人の住所)
死亡の場所 ○○県○○市○○□丁目□番地□ 死亡年月日
平成○○年○○月○○日
出生の場所 ○○県○○市○○□丁目□番地□
出生年月日 昭和○○年○○月○○日
職業 ○○ (被相続人の職業が分からなければ「不詳」となります)
被相続人 亡 ○○○○ (氏名)
○○県○○市○○□丁目□番地□ (相続財産管理人の住所)
相続財産管理人 弁護士 ○○○○ (氏名) |
A相続財産の債権者・受遺者に対する請求申出の催告の公告(民法第957条第1項)
@の公告から2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかった場合、相続財産管理人が行う(公告期間2か月)。公告の方法は、以下の内容の官報公告を出すように官報販売所に依頼することになる。知れている債権者及び受遺者に対しては、同内容の文書により申出を催告する必要があり、知れている債権者や受遺者を除斥することはできません。
費用は、1行(22文字)あたりの単価2、854円に行数分を乗じた金額で、大体3〜4万円かかります。
本籍 ○○県○○市○○□丁目□番地□
最後の住所 ○○県○○市○○□丁目□番地□
被相続人 亡 ○○○○
右相続人の相続人のあることが不明なので,一
切の相続債権者及び受遺者は,本公告掲載の翌日
から二箇月以内に請求の申し出をして下さい。右
期間内にお申し出がないときは弁済から除斥しま
す。
平成○○年○○月○○日
県○○市○○□丁目□番地□
相続財産管理人 弁護士 ○○○○ |
B相続財産の換価(清算)
Aの公告を行うと同時に、相続財産の換価・清算手続も開始されます。 このときに、相続財産管理人は、債権の総額を確定するために、知れている債権者(存在が判明している相続債権者および受遺者)がいる場合は、Aの公告と同じ内容の催告(通知)を個別に送付します。
Aの公告の期間中に、この公告を見て債権の支払いを求める債権者や受遺者からの請求の届出が受け付られます。
Aの公告の期間中は、他に債権者が出てくるかもしれないので、弁済自体を拒絶することができます(民法第957条第2項、第928条)。
Aの公告期間が満了した後は、相続財産により、債権を全額支払えれば全額支払い、全額支払うことができないのであれば、可能な範囲で配当を行います(民法第957条第2項、第929条)
※相続財産管理人の権限外行為許可の申立
相続財産を換価するためには、競売の方法によるとされていますが(民法第957条第2項、第932条)、一般的には競売よりも高価で売却でき、債権者の利益に適うため任意売却が採用されています。しかし、相続財産管理人の権限は、権限の定めのない代理人と同一で、保存行為及び代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為に限られます。相続財産管理人が管理業務を遂行する上で、この権限を越える行為を必要とするときには、家庭裁判所の許可が必要となります(民法第953条、第28条、第103条)。したがって、相続財産を売却するといった民法第103条の権限を越える処分行為を行う場合には、家庭裁判所の許可が必要となり、これを得ずしてなされた売却行為は無権代理行為として無効になるのです。なお、競売による場合には、家庭裁判所の許可は不要です。
・申立権者 相続財産管理人(民法第953条第1項・第28条)
・管轄 相続開始地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法第203条第1号)
・申立費用 収入印紙800円(民訴費用等に関する法律第13条第1項・別表第1の15) 予納郵便切手(各家庭裁判所 の定めによる)
・添付書面 融資残高証明書、取引明細書、不動産登記事項証明書、売買契約書、専任媒介契約書、査定報告書、路線価図、地価図、手続委任状等、その他各家庭裁判所の定めによる書面
売却価格が妥当であることを証する資料としては、不動産鑑定士の鑑定が最も望ましいものであるが、費用の問題もあるため、一般的には不動産業者の査定価格や路線価等を総合的に考慮して判断されています。
申立に対する許可及び却下いずれの審判に対しても不服申立ての手段はありません。
こうした売却により、相続財産債権者に支払や配当が行われますが、売却価額より債務のほうが多額で、配当により財産が消滅した場合には、相続財産の管理は終了することになります。残余財産が存する場合には、C相続人捜索の公告が行われます。
C相続人捜索の公告(民法第958条)
Aの公告から2か月後、なおも相続人のいることが不明な場合(ただし上述したとおり、残余財産が残存している場合のみです。)相続人を捜すため、相続財産管理人の申立てにより家庭裁判所は相続人捜索の公告を行います。
この公告をするためには、審判が行われますが(家事事件手続法第39条・別表第1の99)、家庭裁判所は審判書を作成せずに、申立書又は調書に主文を記載して裁判官が記名捺印し(家事事件手続法第76条第1項)、申立てを認める場合には家庭裁判所が公告手続をします。
裁判所の判断に対して。即時抗告は認められません。
この相続人捜索公告の主な目的は、特別縁故者に対する相続財産分与及び国庫帰属の対象となる財産の確定ですから、Aの公告の終了後に債務超過の場合や、清算手続きを終えて管理財産が消滅した場合には、この公告を行う必要はないのです。
公告期間は6か月を下ることができないものとされていますが(民法第958条)、この6か月の起算点は、公告日とされ、官報には家庭裁判所が官報の掲載を依頼する日から7か月程度後の日を催告期間の最終日とされているようです。
Aの公告期間満了までに請求申出をせず、かつ、財産管理人に知れずに除斥された相続債権者及び受遺者は、この公告期間中に申出をすれば、残余財産から弁済を受けることができます。しかし、この公告期間中に権利を主張する者が現れなかった場合には、相続人及び相続財産管理人に知れることがなかった相続債権者・受遺者が存在した場合、こうした人の権利は行使不能となります(民法第958条の2)。公告の方法は法定されていませんが、一般的に官報公告で行われています。
・申立権者 相続財産管理人及び検察官(民法第958条)
・管轄 相続開始地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法第203条第1号、民法第883条 一般的には財産管理人を選任した家庭裁判所)
・申立費用 収入印紙800円(民訴費用等に関する法律第13条第1項・別表第1の15
予納郵便切手(各家庭裁判所の定めによる)
官報広告料3,670円
・添付書類 債権届出催告の公告が記載された官報 手続委任状(その他各裁判所の定めによる)
公告の内容は以下のとおりです。
次の被相続人の相続財産に対し相続権を主張する者は,
催告期間満了の日までに当裁判所に申し出て下さい。
平成○○年(家)第○○号
申立人 相続財産管理人 弁護士 ○○○○
本籍 ○○県○○市○○□丁目□番地□ (被相続人の本籍)
最後の住所 ○○県○○市○○□丁目□番地□ (被相続人の住所)
死亡の場所 ○○県○○市○○□丁目□番地□
死亡年月日 平成○○年○○月○○日
出生の場所 ○○県○○市○○□丁目□番地□
出生年月日 昭和○○年○○月○○日
職業 ○○ (被相続人の職業が分からなければ「不詳」となります)
被相続人 亡 ○○○○ (氏名)
催告期間満了日 平成○○年○○月○○日 |
D特別縁故者に対する相続財産分与の申立て(民法第958条の3)
被相続人と長期間同居していたり、療養看護に努めていたなど被相続人と特別の縁故があった人から、「特別縁故者に対する相続財産分与」の申立がなされた場合、当該審判手続がなされることがあります(Bの公告が終了した後3か月以内)。特別縁故者が現れなかった、残余財産は国庫へ帰属することになります。